大阪展はあと1ヶ月。見逃し厳禁。『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の見どころ紹介
こんにちは、サロンプロモマガジン編集部です。サロンプロモマガジンを見てくださっている美容師さんの中には、アートが好きな方が多いことと思います。今回の記事では、アート好きでもアート好きじゃなくても、絶対に見逃せない『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』をご紹介! なぜ見逃せないのか、どこが見どころなのか、本展の構成と代表作品もあわせて解説します。
・メトロポリタン美術館とは
アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館は、1866年7月4日、パリでアメリカ独立宣言の90周年を祝うために集ったアメリカの人々によって構想が提案され、1870年4月13日に創立された私立美術館です。「アメリカ国民のために美術の教育と振興を図ること」を使命として、実業家や資産家、芸術家といったニューヨーク市民が中心になり、創立者として尽力しました。
創立当初は1点も存在しなかった作品が、個人コレクターによる寄贈など、関係者の努力で集められ、その結果、膨大なコレクションを形成。1880年にセントラル・パークの一角に移転し、今では、先史時代から現代まで、5000年以上にわたる世界各地の考古遺物・美術品150万点余りを有する世界最大規模の美術館に進化しました。2020年には創立150周年を迎えたメトロポリタン美術館。「世界3大美術館」の1つで、「The Met」という愛称で親しまれています。1日では全ての展示品を見ることができないほどの広さです。
・本展の見どころ
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』は、現在、大阪市立美術館で開催中(2021年11月13日(土)~2022年1月16日(日)まで)。その後は東京・国立新美術館に巡回します(2022年2月9日(水)~5月30日(月)まで)。「何がそんなにすごいのか?」というと、見どころは以下です。
見どころ
・メトロポリタン美術館の主要作品が一挙に鑑賞できる!
・15世紀ルネサンスから19世紀まで、500年を彩った巨匠の作品が勢揃い
・選りすぐりの名画65点のうち、46点が日本初公開!
・超絶技巧の「本物の作品」に生で触れるチャンス
本展には、メトロポリタン美術館を構成する17部門のうち「ヨーロッパ絵画部門」に属する約2,500点の所蔵品から選りすぐりの65点の名画が展示されています。しかもそのうち46点が日本初公開! カラヴァッジョ、フェルメール、ラファエロ、ドガ、ゴッホ、ルノワール、モネといった、日本人にも馴染み深い巨匠たちの作品が一堂に会する、これ以上ない本当に貴重な機会です。
500年の西洋絵画史の中で、誰もが知るような巨匠の作品が一度に見られる、というだけでも稀有な機会ですが、筆者が思う見どころは「本物」の作品に生で触れられるということ。いくら画集やWEB上で作品を見ても、本物の持つ技術や迫力、質量は伝わりません。美術館という重厚な建物の中で見る、高い技術と表現力、サイズ感の作品。実際に見ると、細部まで描きこまれた質感やキャンバスの大きさに圧倒されるはず。その経験は必ず財産になります。もうこれは絶対に見逃すことができません。
・本展覧会が実現した理由
さて、なぜこれだけの主要作品が、一挙に日本にやってくることができたのでしょうか。それは、現在、ヨーロッパ絵画部門の常設展ギャラリーがある2階部分で「スカイライト・プロジェクト」という照明の改修工事が進められているからです。
電灯が普及する前の19世紀末まで、絵画は自然光のもとで描かれ、鑑賞されてきました。その史実に基づき、メトロポリタン美術館の鑑賞環境を、天窓からの自然光を照明に活用することで、より快適で自然に整えようという試み。
つまり、この工事が施工されなければ、美術史を代表する素晴らしい作品たちは、現地に行かないと見ることができなかったのです。たった2,100円(一般料金/高大生は1,500円)で、教科書に載っているレベルの巨匠の作品が生で見れるチャンス。しかも中学生以下は無料です。
・本展の構成
第1章:信仰とルネサンス
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』は、3つの章で構成されています。時系列で展示されているので、西洋絵画史の勉強にもなります。
第1章は「信仰とルネサンス」。イタリアのフィレンツェで15世紀初頭に花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンスは、神と信仰を中心とした中世の世界観に対し、古代ギリシア・ローマの人間中心の文化を理想とみなし、その「再生(ルネサンス)」を目指した芸術運動です。第1章には、イタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちの名画17点が展示されています。特徴はキリストや聖母が立体的に人間らしく描かれていること。
ラファエロ・サンツィオは、イタリア盛期ルネサンスの画家です。『ゲッセマネの祈り』は、20~21歳頃の若きラファエロの作品。新約聖書による、キリストは最後の晩餐のあとに弟子たちを連れてオリーヴ山のゲッセマネの園に向かい、磔刑への恐れに苦悩しながら神に祈りますが、その脇で弟子たちは眠り込んでしまう……という場面を描きました。小さめの作品ですが、ラファエロの繊細で優美な作風を堪能できます。
ルカス・クラーナハ (父)の『パリスの審判』。「パリスの審判」は、16世紀にドイツで流行した神話主題です。ユノ、ミネルヴァ、ヴィーナスの3人の女神のうち、誰が「最も美しい者に」と記された黄金のリンゴを手にすべきか、判定を一任されたトロイアの王子パリスは、世界一の美女を与えると約束してくれたヴィーナスを勝者に選ぶ、という場面を描いています。黄金の代わりに水晶玉を持った人物が、伝令の神メルクリウス。甲冑姿で森で目覚めた男性がパリス、3人の女性が女神たちです。異なる角度から描かれた裸体は、独特の官能性を漂わせています。自然や宝飾品の細かい描写には舌を巻きます。
ちなみに上記に挙げた2作品は日本初公開。他にも、ティツィアーノの『ヴィーナスとアドニス』や、エル・グレコの『羊飼いの礼拝』など、迫力のある作品たちが目白押しです。
第2章:絶対主義と啓蒙主義の時代
第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」は、絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点で紹介されています。
本展のメインビジュアルにも使用されている、カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)の『音楽家たち』。ドラマティックな光と影の明暗表現でバロック様式の立役者となった、17世紀イタリアの最大の巨匠です。この作品は26歳のカラヴァッジョが、最初のパトロンとなったデル・モンテ枢機卿のために描いたものです。
芸術を庇護したデル・モンテの館では、若者たちが音楽や演劇の集いを開いており、カラヴァッジョは彼らをモデルとしてこの作品を描いたと言われています(右から2番目で角笛を手にした若者は、カラヴァッジョの自画像と言われています)。滑らかな白い肌、半開きの赤い唇、指先の美しさはどこか官能的。目の前で見ると、吸い込まれそうな力を持つ作品です。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは17世紀のロレーヌ公国(現フランス北東部)で活躍し、ルイ13世の国王付き画家に任命されたほどの技量を持ちながら、没後急速に忘れ去られ、20世紀に再評価された画家です。彼の作品は、明るい光に照らされた「昼の絵」と、蝋燭の灯が人物を照らしだす「夜の絵」の二つに大別されます。『女占い師』は昼の絵。占い師の老婆を見つめる若者が、周りの女性たちから財布や宝飾品を盗み取られる場面が描かれています。それぞれの人物の表情やポーズは、今にも動き出しそうなリアルさも孕んでいます。
みんな大好きヨハネス・フェルメール。『信仰の寓意』は彼の晩年に描かれた寓意画(ぐういが)です。こちらも日本初公開。胸に手をあて天を仰ぐ女性は「信仰」の擬人像。胸に手を当てる仕草は心のなかの信仰を示し、地球儀を踏む動作はカトリック教会による世界の支配を示唆するものと解釈されています。プロテスタントを公認宗教としたオランダ共和国では、カトリック教徒は公の場での礼拝を禁じられていましたが、「隠れ教会」と呼ばれる家の中の教会でミサや集会を行うことは容認されていました。オランダ庶民の日常生活を好んで描いたフェルメールの卓越した技術を間近で見れるチャンスです。
マリー・アントワネットの世界を彷彿とさせる、きらびやかで可愛らしい作品。ロココ期を代表する画家・フランソワ・ブーシェは、王侯貴族に絶大な人気を博し、ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人から15年以上にわたって寵愛された画家です。『ヴィーナスの化粧』はもともと、ポンパドゥール夫人のためにパリ近郊に建造されたベルヴュー城の「湯殿のアパルトマン」の装飾画で、『ヴィーナスの水浴』(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)と対をなしていました。ポンパドゥール夫人の生活空間の中に飾られていたと思うと、想像が膨らみますね。質感の美しさに思わずうっとりする作品。こちらも日本初公開です。
第3章:革命と人々のための芸術
19世紀はヨーロッパ全土に近代化の波が押し寄せた激動の時代でした。第3章「革命と人々のための芸術」では、市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家の名画18点が展示されています。
印象派の代表的な画家、オーギュスト・ルノワールの『ヒナギクを持つ少女』は、1880年代にルノワールが模索した古典的様式と、柔らかく軽やかな筆致の融合を見ることができます。人物も風景も、線描を使わずに様々な色の濃淡で柔らかく描き出され、画面全体が美しい色彩のハーモニーを奏でています。
日本で展覧会が行われれば、大行列ができる大人気の印象派画家、クロード・モネ。彼のモチーフとしてよく知られる、ジヴェルニーの自宅の庭にある睡蓮を描いたシリーズ。今回日本初公開のこの『睡蓮』は、1915年頃から制作された「大装飾画」と呼ばれる大画面作品の1つ。白内障に侵されていたモネが見た、遠近感のない不思議な光景が描かれています。見る場所や距離によって、表情を変える作品なので、すぐ立ち去らずにじっくりと鑑賞してほしいと思います。
展示数は65点と少なめではありますが、筆者は全てを見るのに3時間を要しました。もちろん、西洋美術史を代表する巨匠の作品だということもありますが、1点1点が背負う歴史の重みや、画家の筆致や想いを感じ、思わず時間を忘れて見入ってしまうパワーがあります。
『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』は、大阪市立美術館にて2022年1月16日(日)まで開催中。また、2022年2月9日(水)~5月30日(月)まで東京・国立新美術館に巡回します。
15世紀の初期ルネサンスから19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画の500年の歴史を感じる傑作に出会える、千載一遇の大チャンス。月曜日は休館ですが、会期中にぜひとも隙間を見つけて訪れてみてください。ちなみに東京会場は火曜日が休館日。美容師さんにとって必要なインスピレーションや感性が磨かれること間違いなし。行かないと後悔するような、重要な展覧会です!
展覧会概要
展覧会公式サイト:https://met.exhn.jp
大阪展
会期:2021年11月13日(土)~ 2022年1月16日(日)
会場:大阪市立美術館(〒543-0063大阪市天王寺区茶臼山町1-82)
主催:大阪市立美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪
後援:公益財団法人 大阪観光局、米国大使館
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、年末年始(2021年12月30日(木)~2022年1月3日(月))
※ただし、1月10日(月・祝)は開館
問合せ:06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール)
公式HP:https://www.osaka-art-museum.jp
アクセス:
・JR天王寺駅 中央口改札
・Osaka Metro御堂筋線・谷町線 天王寺駅15・16号出口
・近鉄南大阪線 大阪阿部野橋駅 西改札口
各出口より北西へ徒歩約10分
東京展
会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木 7-22-2)
主催:国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、B S テレビ東京、TBS、BS-TBS
後援:米国大使館
開館時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日 ※ただし、5月3日(火・祝)は開館
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式HP:https://www.nact.jp
アクセス:
・東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
・東京メトロ日比谷線 六本木駅4a出口から徒歩約5分
・都営地下鉄大江戸線 六本木駅7出口から徒歩約4分