フリーランス美容師のリアルボイス。働き方と集客を語る〜vol.3 つなぐ美容師・田中裕晶さん〜
「個人で頑張る美容師さんの力になりたい」との想いでサロンプロモから誕生した、美容師向け個人ホームページ制作サービス『Salon’s Primo ONE(サロンプロモワン)』と、動画制作サービス『サロムビ』。良いサービスを目指すため、現役で活躍するフリーランス美容師さんの働き方と集客方法、サービスへの率直な意見も含めた「リアルボイス」を紹介する本コーナーも3回目になりました。
3人目は、田中裕晶さん(またもやvol.1の林さんにご紹介いただきました!)。美容師歴22年の田中さんは、毎月福岡・大阪・沖縄のシェアサロンを飛び回りながら活動されています。フリーランスになる前は、大阪のアメリカ村で10年間サロンを経営していた美容室オーナーでした。また、DJやセラピスト、作曲家としての顔も持つマルチな方。人と人をつなぎ、目に見えないものを大切にしたいという気持ちが、美容師以外の活動を広げたようです。
美容師とカウンセラーとDJ。ヘアケアとメンタルケアができる美容師に
もしお店をやりたくなったら、もう1回やればいい
ーーまずはこれまでの経歴を教えてください。出身はどちらですか?
「地元は長崎なんですけど、医療関係の専門学校が神戸だったんです」
ーーえ、医療関係!?
「両親が薬剤師だったので、その影響で1回医療の道に進もうと神戸に来たんですけど、勉強が好きじゃなくて。医療専門学校を辞めて、神戸の美容室に見習いで入って、働きながら通信で美容学校に通いました」
ーー美容室には飛び込みで?
「求人雑誌を見て、未経験OKだったので応募しました。2000年に美容師を始めて2001年にスタイリストデビューした感じですね」
ーー美容師になろうと思ったキッカケは?
「高校の時に美容室に行ったらめっちゃ良い感じになって、次に行った時はその方は辞めていたんですが、指名するくらい良い感じにしてもらったんです。それで自分も人に必要とされる仕事をしたいと思ったのと、単純に美容師がカッコ良くてオシャレだったので。あと中学の頃から、自分の髪も同級生の髪も切ってたんです」
ーー“田中、上手いから切ってよ”、みたいな?
「そうなんです。昔からカットが好きで。その時は感覚で切ってましたね」
ーー神戸でスタイリストになられて、その後は?
「神戸でもう1店舗サロンに勤めました。僕のお客さんはモデルが多くて、雑誌の取材なんかで大阪の心斎橋に行くことが多かったんです。それで2006年に拠点をアメ村に移しました。その3年後、29歳の時に独立して『Velfarre』というサロンをオープンしました」
ーーもともと自分のお店を持ちたいという願望は?
「ありました。それは絶対に20代のうちに叶えたかったんです。とりあえず経営を10年やってみようと思って、2010年から2020年4月末まで丸11年間お店をやって。39歳の時、唯一無二の生き方をしたいと思って、自由に動くために1回店を辞めてみようと。ちょうどスタッフの子が店をやりたいと名乗り出てくれたので、その子に店を譲りました」
ーーそれでフリーランスになられたんですね。
「いろんな場所で働いて、視野を広げたかったんです。自分は九州出身なので、拠点を博多に移して、今は月に3〜4日間、大阪と沖縄に出張しています」
ーーメインは博多のシェアサロンですか?
「そうです。場所だけ借りて、業務委託美容師として月に18日ほど働いています」
ーー休日は?
「ハサミを持たない日は、月に2日くらいですね。ほとんどサロンに行って、18時くらいまで仕事して夜飲みに行く。特に大阪と沖縄はそんな感じです」
ーー大阪は既存のお客さんがいらっしゃるというのでわかるのですが、沖縄で働くことになった経緯は?
「経営者仲間がフランチャイズのサロンをやっていて、“人手が足りないから旅行がてら来てや”と言われて、今年の4月から行きはじめました」
ーーストーリーを拝見したのですが、夜中も働かれていますよね?
「それは大阪ですね。GO TODAY SHAiR SALON心斎橋店は24時間使えるので。朝の9時から夜中の1時まで、予約が入ればやる感じです。大阪は全て指名のお客さんなので、精神的に楽なんですよ」
ーー新規と指名のお客さんはやはり違うものですか。
「全然違います。地域によっても傾向が違うので、お客さんに合わせて接客も変えないとダメです。大阪と沖縄のお客さんはフランクですね」
ーーカット料金は地域ごとに変えているんですか?
「はい、変えています」
ーーどこを1番高く設定していますか?
「指名のお客さんしかとらないので、高くしてるのは大阪です。博多と沖縄はお店の値段に準じています」
ーーシェアサロンは自由度が高いイメージでしたが、値段が決まっているんですか?
「はい、決まってます。あと自分で集客するわけじゃなく、店舗がHot Pepper Beautyで広告を出してるんですよ。だから新規でフリーのお客さんが来店されます」
ーートータルで月に何人くらい施術されているんですか?
「博多・大阪・沖縄、全部合わせて150人くらいですかね。そんなに多くないと思いますよ」
ーー美容師オーナーの時は正社員だったんですよね。フリーランスになって収入はどう変わりましたか?
「自分で経営していた時はランニングコストが決まっていたので、上がる月は上がっていました。収入は今の方が平均的にちょっといいぐらいじゃないですか」
ーーそうなんですね。
「大阪・沖縄・博多で、それぞれ月の目標売上額をクリアしています。気持ち的にも今の方が自由で気楽です。自分的にはガツンと辞めた決断は正解だったと思います」
ーー勇気がいりませんでしたか?
「いりましたよ。でも、“またお店をやりたくなったらもう1回やればいいわ”と思ったんです」
顧客満足度を最大に上げる。それだけですけど、徹底しています
ーー今はインスタでお客さんのヘアスタイルを載せておられると思いますが、発信方法を工夫したり、考えたりはされていますか?
「全くしてないです。自分の感覚で、投稿したい時にするのが僕のスタンス。なのでストレスもないですね」
ーー投稿が途切れないようにはしていますか?
「そうですね、途切れずにというのはあると思うんですけど。ヘアスタイルだけ載せててもあまり面白くないかなと。やっぱり自分を知ってもらいたいので、たまに自分の写真を出したりもしています」
ーー集客はインスタでされているんですか?
「ほとんどそうですけど、指名のお客さんの紹介もあります。大阪は完全予約制で、博多と沖縄に関しては、店舗が契約しているHot Pepper Beautyで集客できてますね」
ーー集客で困っていることは?
「ないですね」
ーー満足できる集客は叶っているという現状ですか。
「そうですね。僕の場合は、『シャーク』というエナジードリンクのスポンサーがついているんです。シャークアンバサダーをやっていて、エナジードリンクを宣伝して。シャークのイベントでDJをしている時に知り合って来てくれるお客さんもいるし、沖縄なら海の家で髪を切ったりして、そこから来客につなげたりしています」
ーー自然に営業ができている。
「そうです。BARに行ったり、仕事をしてない時間で自分をアピールしています。自分が行動して出会った人がお客さんとして来る。それが理想の集客です。というか、僕にはそのやり方が1番向いていて。アシスタント1年目の時にチラシを配って1ヶ月に105人お客さんを呼んだんです」
ーーお店のチラシを作って?
「チラシはもともとあったお店のものです。駅前とかで“来てねー”って配りまくったんです。人間くさいところが大事だなと思って。インスタだとどんな人間かわからないし、僕はアナログなので、まず出会って自分の背景を伝えて、来客してもらうのに尽きますね」
ーーインターネットの時代だけど、アナログを大事にされている。
「そうですね。その人が来たいという気持ちにさせることが大事だと思うので。その入り方ですね」
ーー集客で工夫していることはありますか?
「お客さんとインスタを交換してアフターケアをします。名刺にもLINEのQRコードを載せていて。“気になることとか、何でも気軽に相談してくださいね”って個別にフォローを入れます。来てくれたお客さんの顧客満足度を最大に上げる。それだけですけど、そこは徹底しています」
ーー顧客満足度。
「カウンセリングも、“やりたい髪型とかあったら送ってきてね”と言ったら、皆インスタやLINEで画像を送ってくれるので、そうしたら事前にカウンセリングできる。あとは“来月この期間に大阪や沖縄にいるから、そこでまた来てくれるかな”と言ったら、予約を入れてくれる。自分が行った場所にきちんと指名のお客さんが来る形を作りたいんです」
ーー満足度を上げていくという心がけは、過去の経験からですか?
「そうです。僕は人の心を開かせるのが得意なんですよ。直感力や洞察力も結構ある方なんです。実はこれから、美容師以外の仕事もしていくんですけど」
ーーあ、ストーリーで拝見しました!
「DJとカウンセラーと作曲家をやろうと思いまして」
ーー生計を立てる上でのメインのお仕事は美容師ですか?
「労働収入的なところでいうと美容師ですね。DJはサイドビジネス的な感じです」
ーー他にもこれからやっていきたいと?
「まだ先の話なんですけど、心理セラピストをやりたいと考えています。将来的にはDJとカウンセラーと美容師の3つで活動したいです」
ーーカウンセラーは資格が必要なんですか?
「アート心理セラピストという資格は持っています。お客さんに絵を描いてもらえば性格が大体わかるので、その上で悩みに対して“こうするといいですよ”とアプローチしたり。それとは別に、カラーナビゲーションという、お客さんのオーラをカラーで見て心の状態を分析するものがあって。色と特性を使ってメンタルケアをしていく感じですね」
ーー人を癒したりケアしたいという気持ちは、昔からお持ちだったんですか?
「昔から自分の生きがいが、“人のためや助けになること”だったので。何だかんだそれが1番好きなんです。DJもそうかもしれない。皆が喜んでくれるから。自分がプロデュースする側で、喜んでくれる場を作りたいですね」
髪だけじゃなく、心からハッピーに
ーー“人生を少しだけ変えるお手伝いをしたい”とインスタに載せておられますが、その想いは?
「“髪型だけじゃなく心からハッピーにしたい”という想いです」
ーーそれは美容師になった時からずっと掲げていたことですか。
「いや、ここ最近ですかね」
ーー何かキッカケがあったんですか。
「医療専門学校を辞めて、最初に雇ってくれた神戸の美容室のオーナーが今心理カウンセラーで、メンタルケアをされていて。その影響もあります。気持ちや見えないところを大事にするオーナーなんですけど、自分もそこを大切にしたいと思っています」
ーーなるほど。
「自分は高校生の時、すごくネガティブだったんです。それで心療内科とかに相談して、気持ちも性格も変わったという経験があるので。誰かに相談したいけど近すぎてできないとか、誰に相談したらいいかわからないという人が美容室に来た時に、僕に相談してもらえたらいいなと思います。お客さんは話を聞いてもらいたくて美容室に来るところもあると思うので」
ーーオーナーさんがそういう働き方をされているのを見て、憧れた?
「オーナーが心理カウンセラーになられたのは最近なんです」
ーーずっと連絡を取られているんですか。
「定期的に会っています。アート心理セラピストの資格もオーナーから学んで取得したんです。僕は世の中は全部、目に見えないものでできていると思っています。重要なのは、毎日自分がどんな気持ちで、どんな場所で、人生を生きているかだと思うんですよ。今は精神的な豊かさに重きを置く時代になっている。今病んでる人も楽に生きていけるように、自己肯定感を上げていくところをやっていきたいなと思います」
ーー田中さんのウリというと何ですか。
「ヘアケアとメンタルケアです。“髪だけじゃなく、心からハッピーにします”という。自分が美容室をやってた時は、“Beauty x Music”というテーマで、“美容と音楽を通して感動を送り続けるサロン”というコンセプトでやってたんですね。要は美容師とDJで感動を送り続ける。そこに最近、メンタルケアが入ってきた感じです」
ーー今後はセラピストの体制も整えていきたいと。
「来年やると思います。今は勉強のため、いろんなセミナーに行っています。自分の中で“つなぐ”というのがポイントで。DJは音楽をつなぐんですよ。僕は周りにすごく恵まれています。今いろんな場所で働かせてもらえる環境にいるのは、つながることを大事にしてきたからかなと思います。人生は、どんな人間が自分の周りにいるかが全てなので、つながりは大事だと伝えていきたいです」
ーーもし、新しい田中さんの働き方を『Salon’s Primo ONE』で表現するとしたら、どう感じられますか?
「ちょっとしたHPですよね、わかりやすくていいと思います。僕もあったらやりたいと思います」
ーーこれから活動拠点を増やす予定はありますか。
「もう少し大阪の比率を増やす可能性があるかなと。DJに誘ってもらったり、テレビや雑誌に出たり、いろんなことをさせてもらったのも全部関西だからこそできたこと。関西だから自分はここまで有名になれたし、ブランディングできたと思うんですよ。自分にしかできない唯一無二を完結させるには、やっぱり関西かなと。関西の人は僕の歴史も知ってるので、もうちょっと増やしていくつもりです」
ーーお住まいは博多のままですか?
「九州は落ち着くんです。ご飯も美味しいし、人もそんなに多くないし。ただ落ち着く場所を作っておきたくて。両親も長崎にいて、2時間ぐらいですぐ行けるので、博多にはいると思います」
ーーありがとうございました。
美容師としてだけではなく、自分の能力や得意を活かして活動の場を広げ、お客様も自分自身も豊かな人生が送れる選択をし続けている田中さん。行動力も決断力もある方なので、「美容師 x 心理セラピスト」として活躍する日は、きっとそう遠くないはずです。
田中裕晶さんインスタグラム:https://www.instagram.com/hiroaki.tanaka.1122/
取材撮影協力:
GO TODAY SHAiRE SALON 心斎橋店
大阪府大阪市中央区東心斎橋1-20-14 心斎橋エルナ岩崎ビル 2階
HP:https://www.gotoday-shaire.salon/kansai